月刊駄美術図鑑 2021

「スタッフロールが流れ始めるとすぐにスマホをいじるやつ」

Twitterには書いたけど、子どものころ通ってたプラモデル屋さんの話。
小さい店内にぎっしりとプラモが詰まれ、通路は子ども同士でも
すれ違うのがやっと。
そんな店内に犬がおった。名前はフリフリちゃん。
コリーのような雑種やったと思う。
しっぽがふさふさでそのしっぽをいつもフリフリしてた。
けっこう大きいのにお客さんがいても店の中でゴロンと寝転んでたり、
とにかくかわいかった。
店の外のショーケースにはきれいに塗られたロボダッチの
「石油探検ロボ」が飾ってあって、ラクダに乗ったその姿に
なぜか魅かれていました。

当時は100円や80円のプラモもあり、駄菓子屋には
50円のプラモもあったような。。。
ロボダッチはもちろん、リアルな魚や、ゼンマイで這ってくる手首など
いろんなプラモを買ってました。
その後、専門誌ホビージャパンを買うようになったり、
ガンプラブームにがっつり飲み込まれたりして、
いまだにプラモを作る生活。

最近は買って作るのはええんやけど、完成したものを
置く場所が無いという状況。さてどうしたものか。

さて今月の作品は
「スタッフロールが流れ始めるとすぐにスマホをいじるやつ」。
映画館でのイラっとする行為をミニジオラマにしたもの。
プラ板でパースのついたミニ映画館を作り、鉄道模型の
フィギュアを配置したもの。
スイッチを押すとLEDで客席の迷惑な客のスマホが光ります。
プラモつくりの経験が活かされて割と短時間でできました。

プラモに限らず、作品もどんどん作るのはええんやが、
その後の保管場所に困ってます。
フリフリちゃん助けて!



「呪いの刷毛」

今年の夏は梅雨がだらだらと続き、開けたらいきなり猛暑。
さらにお盆休みに入ると過去無いくらいの豪雨が延々続き、
それが終われば急に冷えたり暑かったりと非常に不安定でしたね。
毎年今年はいつもと違う夏だと言ってるような気もしますが、
この夏は本当に異常な感じがしました。
逆に普通の夏ってどれを指すのかイメージすら出来なくなっています。
縁側で風鈴の音を聞きながらスイカを食べたこともほとんど無いし、
夕方に打ち水をしたら涼しいなとか思った記憶もございません。
この辺はCMから刷り込まれたバーチャルな記憶なのでしょう。
で、夏といえば「怪談」と言うのも謎の季節感ですね。
昔は夏休みのワイドショーは心霊写真特集とか稲川淳二の怪談トーク
とか季節限定みたいにやってましたが「夏=怪談」てのも
最近の若い人には情緒以前の話になってるのかなと。
怖い話を聞いてゾッとして涼をとるってのも良く考えたら無茶な話ですね。
これもイメージの刷り込みなんでしょうか。
教えて普通の夏!知りたいの!普通の夏!と言う気分です。

という訳で今月の駄美術は「呪いの刷毛」。
飾っていた人形の毛がいつの間にか伸びていて、その人形には忌まわしい背景があった!
みたいな怪談に倣って毛が伸びた刷毛を作ってみました。
結果ただの管理の悪い小汚い刷毛に。
しかしコロナもワクチン接種が進むタイミングでどんどん変異してきて、
こっちの方がめちゃくちゃリアル怪談ですよね。。。



「酒と泪と男と女」

なにかとグチばかりになるので、たまには思い出話を。
我々の中学時代は校内暴力という言葉が出始めた頃で
「積み木くずし」や「スクールウォーズ」のようなドラマが放送されるより前、
そういうことが現実世界で起こっていた時代でした。

中学には必修クラブというのがあって、週に1回だったか
2週に1回だったか、1年から3年まで集まって選んだ部活を
やるという時間がありました。
入学して選ぶときに第3希望まで書いたと思うんですが、
最終的に僕が決まったのは「のど自慢」クラブ。
ただ順番に好きな曲をアカペラで1曲歌うという
今思えばとても恥ずかしい罰ゲーム的な部活でしたが、
そこにゴリゴリのヤンキーの3年生のお姉さんがいたのです。
スカートが地面スレスレまで長く、休み時間はグランドの隅の
木陰で集まってヤンキー座りをしているお姉さんです。
何を間違ったのか何となく選んでしまったら、
そこに入れられてしまったのでしょう。
これはどうなるのかと内心ひやひやです。
そのお姉さんの順番になったら、なんと普通に1曲歌ったのです。
そこで反抗するのもなんかカッコ悪かったのかもしれません。
何を歌っていたのか覚えてないのですが、当時の流行りの曲だったのでしょう。
すごくカッコよかったです。

ちなみに僕が歌っていたのは谷村新司「昴」とか
モンキーズ「デイドリーム・ビリーバー」とかでした。

さて今月の作品は「酒と泪と男と女」。
「酒と泪と男と女」や「部屋とYシャツと私」などの
ちょっと長いタイトルの歌謡曲を集めてスロットにしたもの。
うまくそろえるというより「あなたにピッタリな曲名はこれです。」という
感じのものです。
曲名を表示したパネル部分は「ザ・ベストテン」の得点ボードを模したもの。
いろいろな思い出が詰まった昭和の塊です。



「うつむくこけし」

今年は梅雨入りが早くて今もダラダラ続いて非常に鬱陶しい気候ですね。
たまに晴れたらめちゃくちゃ暑かったり。
スカッと気分転換したくてもコロナのせいであれもこれも自粛。
人が集まってはいけない、一緒に飯食ってもいけない、旅行も自粛、
カラオケも自粛って娯楽の半分くらいNGってのはジワジワ効いて
きています。外国でワクチン打ったらマスク外してパーティーして大騒ぎ
みたいなのをニュースで見ましたが心情的には分かります。僕も
その輪に全裸で飛び込みたいくらいです。
カラオケなんかは二等兵界隈では定番の娯楽だったのに再開できるのは
いつのことやら。もうリモートカラオケとか罰ゲームみたいなのを
するしかないかもですね。終わった後の虚しさまで楽しめそうな
気もしてきました。本当ならオリンピック開催でそんなネガティブな
ムードも一掃できればいいのでしょうが来日した選手が陽性とか、もう
何が何やら。そんな盛り上がりに欠けそうな東京五輪に対抗して7月に
我々も「京都五輪」と銘打って妄想の世界中から集まった駄美術の
展覧会を京都の祇園で開催します。オリンピックで晴れない心をこちらで
スカッとして頂けたら幸いです。詳しくは最新情報をご覧ください。

さて今月の駄美術は「うつむくこけし」。
うつむいて落ち込んでいるように見えるこけしも不敵な謎の笑みを
浮かべてリベンジを誓っているかのようです。



「ドライバーセットペーパーウェイト」

家の片づけをしていると板の切れっぱしがいっぱい出てくる。
切れっぱしといっても1mを超えるものもゴロゴロ。 何かを作るとき、東急ハンズやホームセンターで板を切ってもらって
「端材の方はお持ちになりますか?」と聞かれると
根っからの貧乏性のため、絶対「持って帰ります!」と言ってしまう。
何かに使えるだろうと持って帰るのだが、使えた試しがない。

次に何かを作るときに端材を確認して、自分で図面通りに切って ってことは
めんどくさくてやらないので、またホームセンターに図面を持って行って
切ってもらうことになる。
店の巨大な電動のこぎりでズザっと一瞬で切っているのを
見てるんで、自分でのこぎりで水平垂直を気にしながら
ぎこぎこ切るのは時間もかかるし、どうにも無駄なような気がして
やる気になれない。
端材がそのまま使えるなんてことはまず無いし、
そんなこんなで何十年分の端材が溜まっているのです。

いっそのこと端材に気の利いたイラストでも描いて
無名の新人アーティストとしてデビューしようかとも思うのですが、
それすら面倒でなかなか腰が重い。

さて今月の作品は「ドライバーセットペーパーウェイト」。
一見ただのドライバーセットですが、容器に入ってるのではなく、
容器型のアクリル樹脂にドライバーが封入されているのです。
ドライバーを探していて「お!あった あった!」と使おうとしても
容器から出せない。
ただの「重し」としてしか使いようのない無用の長物です。

現在無用の長物である木の切れっぱしもなんとか使えるようにならないかと
気をもむ毎日です。



「たわしの彼は左きき」

50年以上生きていると身体的な衰えと共に、思い込みや勘違いが増えてきて、
しかもそれに気付くのが遅くなってきています。ここ10年ほど同じような事を
言ってきましたが加速がついて酷くなってきています。
以前仕事関係の人と老後の話になり、如何に生活資金を貯め、
運用するかという話になったのですが、僕は昔からこの手の話が苦手というか
頭で理解出来ないので全然入ってこないまま適当な生返事をしていました。
その中で資産運用に関する商品「積み立てN I S A」というのが
流行っているとの話が出たのですが、内容は全く興味が無かったので
忘れましたが、このネーミングを「積み立て兄さん」と空耳してしまい
「分かり易いキャラクターにして資産運用のハードルを下げてるのだな。
すごいなあ。」と心の中で感心したのです。
その何ヶ月後かに銀行に行ったときに「積み立てN I S A」の字面を見て、
もしかして!と思いスマホで調べたら「N I S A(ニーサ)」と読ますとのこと。
本当に他所で知ったかぶりしなくて良かったです。そもそもなんで兄さんやねん、と。

さて今月の駄美術は「たわしの彼は左きき」。
70年代のアイドル麻丘めぐみのヒット曲「わたしの彼は左きき」の空耳バージョンです。
彼氏のたわしが左で箸持ってご飯を食べている様子を再現しました。
この様にわざとボケてるんです、というのは良いのですが
本気で思い込み出す恐怖に怯える年頃になりました。
作品を駄美術と言っていますが、人間がいよいよ駄人間になってきています。



「1プレイ2億円」

松原みきの「真夜中のドア~stay with me」って曲が世界で注目を集めているらしい。
カラオケでもちょいちょい歌ってた1979年リリースの曲。発売から40年以上も経っている。
サブスクリプションで世界中で聴けるようになったり、海外のシンガーがカバーして
YouTubeにアップされたり・・・って 今ならではのヒットの仕方。

確か由紀さおりもちょっと前に海外のチャートで1位を獲得したり、
各国で評価されてたな。
「夜明けのスキャット」の最初のリリースは1969年やって。すごいよなあ。
ちなみに由紀さおりの「手紙」もカラオケでよく歌ってるわ。

インターネットの普及で世界中に時間の壁を越えていろいろなものが届けられてる。
グーグルマップも写真を更新してるから、どんどんストックされて行って、
この先「○○年の地球」っていうのも選んで表示できるようになるんやろな。
衛星写真はフルオートで撮ってたら、人類が絶滅しても撮り続けて更新され続けるかも。
コワ。ちょっとSFになってもうた。

さて
今月の作品は「1プレイ2億円」。
デパートの屋上の遊園地にあった子どもが乗る遊具のオスプレイバージョン。
デパート屋上の遊園地もどんどん無くなってきてるみたい。
楽しかった思い出を残そうとしたら変な方向にたどり着きました。

俺らも何十年後かに評価されへんかな。



「ユーチューブ」

招待制の音声SNSのclubhouseというのがネットの話題になってましたね。
「こんなん招待されることもないよなあ」と思っていたのですが、
高校生の娘の学校で広まっているらしく図らずも身内から招待されて
clubhouseデビューする羽目になりました。
有名人、芸能人に素人が絡んだりできるというのが盛り上がりの原因という話だったのですが、
トークルームは怪しげな繋がりを求めるのが多く、ラジオ感覚で聴けるのが
思ったより少ない印象でした。
で、小学校時代の友人と「昔ラジオごっこみたいな感じでカセットテープに録音して
遊んだよなあ」という会話で盛り上がり、せっかくだしclubhouseでそれをやろうという事に。
酒を飲みながらグダグダ話してそれなりに楽しかったのですが、よく考えたらこれって
お客さんの前でリモート飲み会してるだけやん!と言う事に気づいたのです。
LINEとかZoomでええよなと。今のところ広告も出ないし、どうやって収益上げんのかなと
他人事ながら心配しております。
そういえばYouTubeも最初は広告も出なくて不思議だったのですが今では鬱陶しいくらい広告だらけ。
clubhouseももっと人が集まり出したら課金したり広告流れたりするのでしょうな。

と、いう訳で今月の駄美術は「ユーチューブ」。
YouTube(ユーチューブ)と聞いて「日本語で言えば『あなたのチューブ』かあ。」と思い
「チューブ」といえば歯磨き粉かな、「あなた」は仮に山田君かな、山田君専用歯磨き粉がそれだな…、
と妄想が加速して出来たのがこの作品です。
「正しくはユアチューブやろ!」と言う突っ込みもありそうなので、念のためウィキペディアで
本家YouTubeの名前の由来を調べたら「あなたのブラウン管(Tubeがそう言う意味だそうです)」を
意味していて、個人が番組を配信して楽しんで欲しいとの思いを込めているとのこと。
さらに注釈に「文法的に正しいのはYour Tube(ユアチューブ)」と書いてました。
なんや!僕と同じボケやん!



「猫砂スノードーム」

去年の2月頭は ちらっと台湾に行ってました。
台湾いいですね。
食べ物美味しいし、 公園に野生のリスがいたりして。
毎晩足裏マッサージに行ってました。
向こうで会った日本から移住した人も日本に帰りたくないと言ってました。
そのときは おー そうですかと聞いてたんですが、
その言葉を痛感した1年となりました。

思えばその2月頭でも大きい建物や施設の入り口に人が立って
入館者の手に消毒液をかけていて感染防止に努めてました。
結局 台湾は感染の封じ込めに成功し、その後、何百日も
感染者を出さず、マスクをしているだけで普通の生活を
送れていたと。もちろん外食も国内旅行もバンバン行けていると。
政府の対応って緊急事態にこそ如実に現れるんですね。
日本はショッカーに征服されたような状態で、人々は虐げられてますが。。。

で、今月の作品は昨年の個展でも好評だった「猫砂スノードーム」。
「駄美術100連発」という展覧会でいろいろな角度のネタを作っているとき、
スノードームで何かできないかなと考えたもの。
スノードームだけどスノーじゃないものが降ってたらイヤやなあと。
100作品を展示するという緊急事態になってこそ生み出された作品です。



「全方位家内安全」

新年明けましておめでとうございます。
昨年は「コロナ禍」が世間で言い囃されましたが、現代美術二等兵は
台北でのグループ展参加やレクチャー、恒例の個展を無事開催できました。
しかしなんでも「コロナ禍」って前置きしたらええような一年でしたね。
もうしまいに「コロナ禍なので宿題忘れました」とか
「コロナ禍のせいでお風呂空焚きしてもうた」と、あらゆる言い訳に
使えそうな勢いでしたね。
個人的にはコロナ禍のせいで色々普段の仕事で
慣れないことの連続や気分的に新作を作るモチベーションが低下し
何も面白いことが思いつかない状態という、マジで生まれて
初めてのような体験をしました。
そうは言っても年末の個展のスケジュールも迫ってきて
半ばヤケクソ気味に決めたのが駄美術の新作を100点作る
というテーマにし、2ヶ月弱の制作期間を経てなんとか
二人で100点展示することができたのです。
とりあえず一人50点作ればいいや、と軽い気持ちだったのですが
ここでも20点分ほどアイデアが出た後、残り30点が全く思いつかない
状態になり、焦りを通り越して恐怖を感じるほどでした。
なんとか乗り切りましたが、自分自身の限界を知った思いです。
自分自身の作品でのボケ方も実は数パターンしかないなあ、とか。
さて、今月の駄美術は「全方位家内安全」。門松があちこちに先端を
向けて全方位からの攻撃に備えている様子を再現しました。
来年の今頃は、防御の事ばかり考えなくてもいい
穏やかな正月を迎えれるよう心から祈っております。