月刊駄美術図鑑 2018

「会社のシュレッダーに額縁つけました」

リスペクト、オマージュ、インスパイア、パロディ、パクリ・・・etc。
いろいろな言葉が存在して、ネットでちょっと検索するとその違いを
丁寧に解説してくれているサイトがたくさん見つかります。
基本的に我々の作品は何かを元ネタとして、そのアレンジや派生を
考えて生み出されることが多く、これらの言葉のどれかに
当てはまるような気がします。
おそらくこのどれかなんですが、我々の場合は「いじり」と
表現されることが多い。
ミロのヴィーナスのアレンジをあれこれ並べると、
それは「ヴィーナスいじり」と言われてしまうのです。

なぜパロディやオマージュじゃなく、「いじり」なのか…。
関西人の悲しいサガから醸し出される雰囲気が、
横文字に合わないということでしょうか? 

さて今月の作品は「会社のシュレッダーに額縁つけました」。
バンクシーの作品がオークション会場で落札された直後、
額縁に仕込まれたシュレッダーが作動して、作品が切り刻まれたという
例の事件をモチーフに、身近なもので雰囲気だけ構成したもの。
あの事件を単なるイタズラと言っていいものかわかりませんが、
まあこの作品はリスペクトやオマージュではなく、単なるイタズラと
思ってもらって差し支えありません。
バンクシーいじりというやつでしょうか?


「アラブのあぶらとり」

先日、使っているスマホを落としてしまい、調子が悪くなってしまいました。
奥さんの使ってるパッドも古くなったし、タイミング的に
ぼちぼち機種変更しようと思い携帯屋へ行ったのです。
閉店間際ですが色々と安くする術を店員が話してくれて、
ほな契約しよかと思ったら、足りない書類があったので明日また行くから、
ということで次の日に出直したら、担当してた店員があいにくの休み。
で、別の店員に昨日これこれこういう内容で、こんなプラン提示されて、
と話したらその店員めっちゃ調べ出して
「お客様の場合、そういうのは出来ません。」みたいな事をのたまうのです。
「昨日紙で出力して色々説明されたので、データとか残ってるでしょ。」
と聞いたら「データとか残してないのです。」と。
「えええええっ!そのカチャカチャ叩いてるパソコン何やねん!
パソコンじゃなくて大きい電卓か何かか!」と
思わず叫びそうになってしまいました。結局あれこれ文句を言って、
店長出てきてさらに話が元に戻って、2時間以上あれこれやって
無事?機種変更となりました。まあ、携帯屋のプランってなんやろね。
行くたびに時間めっちゃかかるし
あれって、人に合わせてプランを組んでます!みたいなアピールしてるけど、
ほんまは2,3パターンしか無いんちゃうの、と意地悪な気持ちになるよね。

さて、愚痴はほどほどに、今月の駄美術は「アラブのあぶらとり」。
あぶらとり紙のあの感じなのですが、あぶらをたくさん取って稼いでいるのは
アラブの人かなあ、と思い絵筆を取りました。
なんでもシンプルなんがええわ。ホンマ。


「キャシャーンの神」

我々(と シェーンも巻き込みますが)、昔から見た目がかわいげなく
大学時代も何もしてなくても「怖い」と言われてまして。

とにかく初対面の人はなるべく俺らにかかわらんようにしようとしていると思う。

何年か前、ペットショップにエビのエサを買いに行ったときに、
エビがワーッて 群がってなんか食べてるから このエサ買おうかなあと 
そこにいた店員のお姉さんに
「これなに食べてんですか?」って聞いたら「エサです。」っつって 
スタタタと離れていきよる。マンガか!
「いや どのエサですか?」と食らいついたら しぶしぶ商品のところに
連れて行ってくれた。
単に忙しかったんかも知れんが。
とにかく関わりあいになりたくないようです。

一応 気にして なるべく他人に嫌悪感を与えんように ニコニコしてるつもり
やけど、どっちかというとニヤニヤに見えてるようで、それはそれで気持ち悪いか。
なかなか難しいな。

さて今月の作品は「キャシャーンの神」。
2013年に「ツムテンカク」というイベントに出品させてもらったときのもの。
通天閣を中心に新世界全域で行われるアート&デザインイベントで、
妄想工作所の乙幡啓子さんも巻き込み、新世界稲荷神社を展示会場として
「NEOよろずの神」といういろいろな神を展示したシリーズ。
神社のきつね像(狛犬)がカッコよかったんで、横にキャシャーンのフィギュアを
置いて相棒のフレンダー風に見えるようにしてみました。

もう5年も前のことなのでお咎めはなかったけど、今ならSNSで「不謹慎だ!」と
たたかれてるかもしれんわ。
まあ皆さんもニコニコ顔でお願いします。


「血のにじむリゾート」

今年の夏が暑すぎる、という話はニュースでも聞き飽きるぐらい
もう本当に勘弁して欲しいのですよね。その異常さのエピソードを二つほど。
家の裏庭に水やりは適当でOKと言われる丈夫な植物の鉢植えを何個か
置いてるのですが、さすがにちょっと暑すぎるので水やりをしたら、
そのうちの一個が次の朝、見事に枯れ果ててました。
多分想像ですが、土が焼石みたいになってて、そこに水をやったことで、
焼石状態の土をくぐって熱湯になった水が根に回ったのかもしれんなあ、と。
あと、ベランダに置いてあるスリッパ替わりのクロックスが二回りほど暑さで
縮んでしまい、履けなくなってしまいました。しかたがないので洗濯物を
干すのに靴下だけでベランダに出たら、靴下越しに足の裏を火傷。程度は軽い
けど、けっこうしばらくジンジン痛くてマジな火傷。
2,3分程度ベランダに出ただけで、しかも靴下履いた皮の厚い足の裏が。。。
こんな異常なエピソードが今年はあちこちであるんやろな、と想像します。
又涼しくなったら、ぶっ飛んだ酷暑エピソードを聞いてみたいもんです。

さて、今月の駄美術は「血のにじむリゾート」。有刺鉄線ネタシリーズの一点
です。今年のくそ暑いプールサイドは裸足で歩くと大火傷。これを履いて歩くと
流血騒ぎ。究極の選択を強いられるサンダルです。
オシャレなみなさんはこんな物履かずに精々ナイトプールでインスタ映え狙って
残暑を乗り切ってや!


「宝石箱の宝石箱」

突然ですが 行列のできる飲食店が苦手です。
待つのがイヤというわけじゃないです。
待つのも並ぶのも全然大丈夫。

小学校に入る直前に引越しして、1年生の時、しばらく3つ上の姉と下校してた。
授業終わって姉の教室に行ったら、ちょっと待っててと言われて教室の前で待ってた。
やることないんで、足ふきマットを整えたり、下駄箱の靴をそろえたりして
ぼーっと待ってた。
今になって考えると、1年生は給食食べて終わりやったんやけど、
4年生は6時間目まであって、5時間目と6時間目 
ずっと待ってたんか。。。けっこうひどいな。
引っ越したばっかりで知らん街やし、友達もおれへんかったから
しゃあなかったんやけど。

そんなこんなで待つことは大丈夫。
並ぶ飲食店のなにが苦手かというと「並ばれる」ことが
どうにも耐えられへん。
自分が列の最後尾という状況やったらええけど、そんなわけはなく
順番が来て俺が食べてるときに誰かが待ってる。食べ終わるのをただ待ってる。
店によっては、店内にまで列があって、食べてる真後ろに人が立ってたりする。
なんかめしくらいはゆっくり味わいたいなあと思うわけです。

そんな話とはまったく関係のない今月の作品は「宝石箱の宝石箱」。
不定期で行っている「おバカ創作研究所」というイベントで発表したもの。
姉を待ち続けていた小学校時代に流行ったアイスを再現しました。
100円ショップでちょうどいい容器を発見して改造したものです。

今後も現代美術二等兵の展覧会はありますが、行列にはならないので
ゆっくりご観覧ください。


「角が立ってる泡だて器」

この前の東京での展示の話ですが、今回
有刺鉄線を素材にすることが前提で作品を
作ったのですが、僕にとっては初めての素材で
なかなかの苦労をしました。
有刺鉄線には鉄製とステンレス製があり、
錆びるのはどうか、ということでステンレスを
選んだのですが、まあ固いこと。
全然曲がらない、というならあきらめも
付くのですが、微妙な硬さで力をわりとしっかり
かければ曲がる感じ。ペンチを使って作業しつつ
フォルムが出来てきたら、全体を手の力で
微調整するの繰り返し。
なんというか、じわじわ来る肉体労働て感じで
作業した次の日は手がじんじんして、握りこぶしを
作るのがつらい状態。
いつもいろんな素材をあれこれ適当に使って
作品化してるのです、ストイックに作るということは
こんなに根性がいるのか!と25年以上やっていて
思い知らされました。
で、今月の駄美術「角(つの)が立ってる泡だて器」。
よくホイップすときに「角が立つくらいまでかき混ぜる」
とか言いますよね。せっかくなんで最初から泡だて器の方に
角を立ててみました。
上で制作上の苦労を書いたのですが、出来上がったものは
この体たらくです。。。


「危険球」

家の近所でも会社の近所でも異国の人たちがコンビニでバイトしてる。
ここ数年 結構増えた。
ようあんな複雑なオペレーションのバイトを他の国でできるなあと
感心してしまう。
俺がシンガポールやパキスタンのコンビニでバイトするかと考えると
とうていでけへんわ。

他にもバイトはいろいろあるやろうに、なぜコンビニを選ぶのか。
自国でもコンビニに入ってたんかもしれんな。
もしくは接客業で より日本語を習得しようという向上心か。
スバラシイ。

俺は英語もさっぱりわからんから海外で仕事をするなんて発想はないけど、
日本のスポーツ選手もどんどん海外に出て行って活躍してる。

野球、サッカー、プロレス・・・
その競技のトップってことだけでもすごいのに、英語もけっこう
しゃべったりしてて、みんなすごいね。

無理やりスポーツに話題をもっていったところで
今月の作品は「危険球」。
有刺鉄線をネタにいろいろ作った展覧会の作品のひとつ。
ほんとの「危険球」ってピッチャーがバッターの頭部や顔面に当ててしまうことを
いうんやが、有刺鉄線で文字通りの「危険な球」をつくってみた。
英訳もしようかと思ったけど、野球用語の英語ってようわからんかった。

必要なのは語学力とそれ以前の作家としてのイマジネーションか。


「ダルマエアロカスタム」

車にはあまり興味がないのですが、今乗ってる車が
来月車検で、最近の車どんなんかな、と調べたりするのですが
なんでしょうね、どこもかしこも同じような車のフロントの
デザイン。ヘッドライトは昔から進化したからあんなに
細く吊り上がった目のようにしてるのでしょうか。
某最大手の車メーカーなんか無理やりデザインを
統一イメージにしたいのか、最高級車も商用車も似たような
顔だち。あれがみんな求めてんのかなあ。
他社メーカーもほとんど同じ面をしてる。なんか怒り顔の
車のデザイン多すぎな気がする。もっと普通に出来へんもんか。。。

と言う訳で今月の駄美術「ダルマエアロカスタム」。
ダルマが進化してよりスポーティーな顔たちになりました。
マイルドヤンキー層に手に取ってもらいたいダルマです。


「ツアータオル刺繍ワッペン」

「お前を嫁にもらう前に言っておきたい事がある」
「かなりきびしい話もするが俺の本音を聴いておけ」

最近なにかと せちがらい。
なんかいうたら 不謹慎やとかふざけるなとか
全然関係ない人がワーワーワーワー。
アカンもんはアカンけど、関係ないやつが
ワーワー言うことないがな。

昭和の名曲にさだまさしの「関白宣言」っていう曲がある。
なんか最近のネットの炎上って、この曲の前半部分『だけ』を
ネットが報道して、それ『だけ』を見た人がけしからん!って
怒ってるみたいやわ。

「俺より先に寝てはいけない俺より後に起きてもいけない」
「めしは上手く作れ いつもきれいでいろ」

そんな部分的なところを切り取って報道。
前後もわからずそこだけを見て激怒。なんかなあ。

曲を聴いていくと
「出来る範囲でかまわないから」に続くんやが。
その大事な部分を聴かんと この曲全体の意味が違ってくる。

んで なんか問題が起こった時にわざわざ電話でクレーム入れるの
なんやろね。アンタ関係ないやろが。
しかも問題を起こした企業や団体と 似た名前の全く関係ないところに
間違って電話するやつもおる。
どんだけそそっかしいねん。落ち着き~や。

さて今月の作品は「ツアータオル刺繍ワッペン」。
不定期開催のイベント「おバカ創作研究所」で発表したアーチストグッズです。
ツアータオルをミニサイズの刺繍ワッペンにして、胸元のワンポイントに
できるというもの。
あのワニやペンギンにも ふわっとツアータオルをかけてあげることができます。
出来る範囲でやってみた結果がこんな感じ。
みなさま寛容にお願いします。


「ハダカのだるま」

普段は作品を売って生活など出来るわけもなく、
会社勤めをしてまして、印刷会社でパッケージのデザイン、
企画などをしております。
その関係もあり日本パッケージデザイン協会に所属を
してまして先日なんと西日本支部の新年会で講演会を
する機会がありました。もちろん現代美術二等兵として。
協会に入って20年近く経つのですが、当初は制作も始めては
いたのですが、本業はパッケージのデザインや!
世の中に末永く残るデザインを手掛けたい!などと割と
マジで思っていたのです。
が、駄美術制作も長く続けていると有難いことに
いろいろなところから展示やレクチャー話を頂くのですが
まさか、自分が本業で所属している団体から、現代美術 二等兵として
声がかかるとは、まさか予想だにしてなかったです。
自分たちの事を話するのは今だに気恥ずかしく、なるべく
作品だけ見て欲しい!と思う方なので、自分の性癖を
披露しているような、穴があったら入りたいような気分でした。
反応としては皆様好意的に見てくださり、かろうじて
救われ気持ちです。

という訳で今月の駄美術「ハダカのだるま」。
ダルマの赤い法衣を脱がすとこんな風に中の人は
なっていて「イヤン!恥ずかしい!」と言ってるのでは?
と思いハダカのだるまを作ってみました。
話は戻りますが、あのようなレクチャーの場では
変に自分を偽らず、裸のまま素直に表現すべきだったなあ、
と「ハダカのだるま」を見ながら思うのでした。


「にせダルマ」

なぜかゴジラが二頭出現、いがみあっているうちに一頭が炎につつまれ、
炎の中から金属の巨大な兵器・メカゴジラが姿を現す…。
そんな感じやったと思う、子どものころに観た「ゴジラ対メカゴジラ」。
なぜか映画館ではなく、ボーリング場の2階の小部屋に子供が集まって観てたんやが
あれってなんやったんかな。
とにかく 炎の中からメカゴジラが現れるシーンは強烈で
「わ~ カッコええ~!」と単純に驚愕したのでした。


仮面ライダーも1号2号のダブルライダーに対して6人ものニセライダー(ショッカーライダー)が
登場する回があり、8人のライダーが入り乱れて戦う姿は圧巻!
ウルトラマンにもニセウルトラマンが登場するなど、
特撮やヒーローものには「ニセ」がつきもの。

思えば我々の作品も工業製品にニセてつくることが多い。
地上絵を模した蚊取り線香「ナスカの夏、ペルーの夏」も本当の線香ではなく
木の板を切ったダミーやし、ケータイを型取りしてバリエーション作ったり、
プラ板の積層を削って万能ナイフを作ったり…。
そういうのはめちゃくちゃ手間がかかるのに、見た目は雑貨みたいやから
ものすご~く安っぽく見えたりする。
手間暇かけて安いものに似せていくという不思議な作業を
しょっちゅう繰り返してる。
なんなんやろな。
存在してない工業製品を手でつくるってとこがポイントやったりするんやが
今や3Dプリンターで1個からきっちりしたもんが出来るし、
この手法の驚きはもうないんかもしれんな。

そんなこんなで今月の作品は「にせダルマ」。
吊り上がった眼ですぐにニセってわかるはずやのに、
周りの人は全然気づかなくて視聴者がイライラするという感じも
イメージして作りました。
胸に書かれた文字は「福」に似たもんで変なやつないかなと
考えて「蝠」にしました。こうもりの「もり」、「まむし」とも読むみたい。
もちろんつり目はハンドメイドで紙粘土を使った改造です。
まだまだやるで~ ハンドメイド!


「ルージュの伝言」

昨年は25周年ということで、ギャラリー空間に25年分の
作品を無理やり展示するという展覧会をやりました。
まず古い作品探しから始まるのですが、まったくどこに
いったのか行方不明のものや(もちろん売れたわけでなく)、
タイトルさえはっきり覚えてない作品や、自然に崩壊した
ものなど、25年の月日を思い知らされました。
20周年のときも同じように昔の作品を探したのですが確実に
どこに行ったかわからないものが増えてるのです。
狭い物置に収納してるだけなのに。
最近物忘れもひどく、人の名前なんかヤバいくらい
思い出せないことがあるのですが、もしかして
作った気になって、実在しない作品を探してるだけ
だったらどうしよう!と背筋が寒くなる想像すら
する始末。もうこれはボケ始めなのかもしれません。

さて、今月の駄美術「ルージュの伝言」。
このサイトも2003年の1月から始めて15年目に突入です。
毎月駄美術を紹介しているのですが、原稿を書くたびに
「これもう紹介したかなあ?」と、いちいちサイトを確認
しております。そんなわけで意外なことに「ルージュの伝言」は
まだでした。父親が息子(又は彼氏?)にルージュで鏡に
伝言を残したシチュエーションを再現した作品です。
展示のたびに口紅で書いてるのですが、これって作品ではなく
ただの行為やな、と気づいたのですが、まあいいかと。
そんな感じで今年もゆるーく作り続けますので
皆様どうぞよろしくお願い申し上げます!!