月刊駄美術図鑑 2007

「カニちゃん」

皆さん、あだ名で呼ばれたりしてますか?
もし呼ばれているならどんな かんじでしょうか。
一般的には苗字や名前をもじったものが多数で、ストーリ性のあるあだ名の人は
稀ではないでしょうか。ストーリー性のあるあだ名というのは例えば、
昔のドラマ「太陽にほえろ」の刑事のような。
ジーンズを穿いてるから「ジーパン」とか、「エースをねらえ」のお蝶婦人とか、
そんなかんじのものです。なんとなく子供の頃は、あだ名というのは
どちらかというと、そういうイメージのものだと思い込んでましたが、実際に
クラスで一番頭のいい子を「博士」と呼んだり、かわいい女子を
「マドンナ」とか呼んだりすることなんて、現実子供社会ではありえないような
気がするのですが。呼ぶのがこっ恥ずかしいというか。
僕なんかは苗字から「かごちゃん」とか、ごくシンプルなかんじで
呼ばれてました。自分ではシェーンなどと言ってますが、「本名ですか?」と
聞かれると恥ずかしさからか「いいえ、本名は隆です。」とすぐネタを
ばらして しまいます。そんなんやったら名乗らなければいいのでしょうが。

さて、今月の駄美術「カニちゃん」。あの女性からも人気の
「エビちゃん」こと蛯原由里さんも実にヒネリのないあだ名。それなら、
こんなヒネリのないカニで出来た「カニちゃん」がいてもOKでは?と思い
作ってみました。
変装用かつらに、顔はタラバガニの甲羅で出来ています。
「エビちゃん」的なヒネリの無さですが、甲羅に刻まれたデコボコは海底での
歳月の長さを物語っているようです。
しかし、夢に出てきそうな気持ち悪さだと散々言われましたが。



「柱時計」

社会生活を営んでいくにはルールというものが必要ですね。守ることは当たり前で、
ルールはもちらん必要なんですが、 “融通”という言葉もあります。
なにもかも杓子定規だけでは物事が進まない。

こないだ大きい道の横断歩道を渡っていたら 前から自転車に乗ったおじいさんが
やってきました。普通そういう状況なら なんなくすれ違うんですが、 どんどんおじいさんが
俺に向かって突っ込んでくる。 いよいよぶつかるかというときにお互いが避けてぎりぎりで
すれ違ったんですが、 その間際おじいさんに「ごらぁ!」と怒鳴られました。 そのときは全く
意味がわからなかったのですが よく見てみると俺が横断歩道の端の「自転車」と書かれた
ゾーンを歩いていたのです。 なるほどとは思いましたが、わざわざ「ごらぁ!」と
怒られるほどのことかと だんだん腹が立ってきました。 確かに自転車用のゾーンは
ありますが、人は人用、自転車は自転車用しか入っちゃダメ!って 頑なに思っていると
いらぬいざこざが起こってしまうのです。大体自転車のゾーンって 細いので自転車3台も
双方からくるととてもすれ違えません。 丸太橋やないんやから ちょっと線を出て臨機応変にうまくやればいいと思うのです。

「柱時計」という言葉があるからといって ほんとに柱状の時計にしてしまうと、 その柱で家を
作ったときに電池交換が大変になります。臨機応変に!



「スカンクブックエンド」

昔の宝物や建造物なんかで、よく見ると柱の下のほうで踏みつけられても
健気に支えたり、全体の一部として機能する動物のモチーフがデザイン化
されているのをよく見かけます。
動物フェチでもある僕は、その作品の歴史的価値云々なんかより小ネタ的に
扱われているその生き物達に目が釘付けに成らざるを得ません。
名所旧跡や寺社仏閣に行っても、優雅に鑑賞どころではなくそんな動物探しや、
あら探しばかりで、知識や教養などとは縁遠い無駄な時間を浪費してしまいます。

さて、今月の駄美術「スカンクブックエンド」。
いつもお世話になっているディテールさんからのご依頼で合皮を使ったブックエンドを
何か考えて欲しいとのテーマでデザインしました。
最初お話を聞いたときに浮かんだのが、上記のけなげに支える動物たち。
それなら、屁を
こきかけているスカンクが無理な体勢で支えているのはどうかなあ、
と作ってみたら採用となりました。こういうモチーフだと、お腹を押すとプーと鳴ったり、
スイッチを押すとじたばた動いたりしそうですが、そんな仕掛けは全くなしです。
よく考えたら、これじゃなくても重たい縫いぐるみがあれば代用できるのですが、
それは言わない約束で。売り物の宣伝みたいで、申し訳ありませんが、
気になられた方は是非店頭で手にとってお買い上げ下されば幸いです。



「ものごっつ作者近影」

マンガや文庫本の「作者近影」で、めっちゃ古い写真のままの人っていますね。
あれはなんでですかね。撮りなおすのがめんどくさいんでしょうか。
なんとかもっと近影に出来ないものか・・・もっと近影に!もっと近影に!
と考えていて、無理やり思いつきました。写真ではなく作者のリアルタイムを
映すモニターになってればいいのになあと。

実はつい最近までこの作品の存在を忘れていました。
確か2000年くらいにテレビ出演用に考えたものです。そのときは首から支柱を
伸ばして、その先にビデオカメラをつけ、文庫本の“作者近影”部分に
仕込んだモニターとつなぎました。モニターにはフチがついているので、
より1枚の紙っぽく見せるためにレンズ石というものを挟んでフラットに
したのですが、これがなかなか鮮明にならなくて苦労しました。
番組での評価もそのぼんやり具合に比例してパッとせず、メダルを
逃しました。

今回この作品を写真に残そうとしたんですが、ビデオカメラに
映っている自分をデジタルカメラで撮影するというのはなかなか難しいですね。
さんざん悪戦苦闘して映った画像は、やはりぼんやりしてました。

「暑がり」

今年は春先から夏は暑くなるよ!とTVの天気予報で再三言ってたので
さぞかしウンザリするくらい暑いのかなあ、と覚悟してたのですが、
思いのほか、最近までは過ごしやすかったですね。
しかし梅雨明けしてからは、きっちり暑くなり、今まで何度か
書きましたが、タオルハンカチを2枚くらい持って外出しないと
不安な僕なのです。ハンカチ王子みたいに爽やかな汗ならいいのでしょうが、
40前のおっさんの汗なので推して知るべしですわ。
レモンの香りなんかしません、強いて言えばラード系!?

暑いと何が嫌かというと、汗をかくだけでなく、あらゆる思考が
鈍ってしまうからです。平素気をつかってる諸々のことが
「暑いしもうええわ。」と投げやりな気分になり、メガネがずれていようが
駅の券売機でおつりを10円取り忘れたりしても、すぐ諦めてきにするのも
面倒くさくなります。
あと、判断ミスもしがちで、道を間違えて遠回りをしてしまったり、
缶コーヒーを買おうと自販機で間違って「あったかーい」を押してしまい
「キキーッ!」と声にならない声をあげて余計に疲れたりします。
やっぱ好きになれんわ、夏。

で、今月の駄美術は「暑がり」。
去年の今頃神戸のウインドウギャラリーで 展示していたものの一部です。
真夏のショウウインドウの中でバテバテになったぬいぐるみのクマが
さすがに耐え切れず、着ぐるみの上半身を脱いでグッタリしている様を
作ってみました。このときはその他、扇風機が暑さに負けて
アイスティーをストローで飲んでいたり、暑いイメージの言葉が、大量に
ぶら下がっていたりと、目にも暑苦しい作品のオンパレード。
真夏に熱いラーメンを食べて暑気払いをするようなイメージでしょうか。

「娯楽アート 岩窟の聖母」

何度か掲示板には書いてますが、僕にときどき「裏目くん」というのが
とりつくことがあるのです。イメージ的にはこなきジジイのように背中に
しがみついていて、あれこれ嫌な方向に行くように選択させるのです。
一度とりつくと2週間くらい離れません。
例えば車に乗っていて、選んだ道が祭りやマラソンで封鎖されていたり、
そろそろガソリンいれるかと思いつつ、一つ目のスタンドを通り過ぎたら
そのあとのスタンドは軒並み定休日で探し回ることになったり・・・。
とにかくちょっとした選択が真逆真逆に進んでいくのです。
もう何年も苦しめられてきてあきらめていたのですが、最近ふと気づきました。
これはキチンと計画すればするほど、なにか
崩れたときに連鎖的に被害が
拡大してしまうのでは…。もしかして何も考えずに ふら~っと
行動していれば裏目になりようがないのではないか・・・と!

で、最近は裏目くんの気配を感じると「何も考えない作戦」に切り替えます。
なんとこれがバッチリ!すべてふわ~っといい方向にいくのです。
遠出をするときも電車の時間など気にせず、とりあえず駅にいくと
ジャストのタイミングで快速に乗れたり、いい連鎖で過ごせるのです。

作品もあまり深くコンセプトなど考えず、気軽に作ったら、わりとかわいく
まとまったりします。ラッキーパンチというやつですかね。
この「娯楽アート」も既製品の駄玩具の背景にちょっと有名絵画でも
入れてみるかあと軽くやってみたら、なんかそれなりにハマりました。

「ハイテク御用」

しかしまあ、物騒な世の中になりましたな。ここ最近、
もう感覚が麻痺するくらい嫌な事件ばかり。車に乗っても、
道を歩いても、ゴハンを食べに行ってさえ事件に巻き込まれる
可能性があるのだから、一体ここは何処の国やねん!と
思ってしまいます。警察ですら悪事をはたらくというのですから
もう、自分の身は自分で守るしかないのですかね。
かといって銃を
持つというアメリカンな発送はバカっぽくて
遠慮したいものです。

さて、今月の駄美術は「ハイテク御用」。
暮らしを守るホームセキュリティのあの会社のマークを
提灯に落とし込みました。我が家にセコムを導入するほど
裕福ではない人は、せめて軒先にこれを吊るして
盗人、暴漢の類から身を守りたいものです。
もし不審者が侵入してきたら、この提灯を下げたスタッフが
たちまち取り押さえてくれるでしょうか。
ちょっと頼りなさそうですが。

「原始富士」

最近ニュースで「ネタ元がブログ」ってのが増えてきました。
だれだれの離婚が「自身のブログで発表されました。」みたいなやつ。
あんなもんに書いただけで、すべて“真実”になるっていうのが
スゴイですね。
だいたい本人が書いてるかどうかも確証ないと思うんですが。

僕が「水陸両用車買いました!」とか
「新種の昆虫を捕まえました!」とかネットに書いたら 
それで信用されるんでしょうか。
「うそだと~?!ブログに書いてたじゃないか!!」って
怒るヒトとか居そうです。

そのうち「私の心情はYou Tubeにアップしました。」とか
「インタビューを携帯でダウンロードしてください。」っていう芸能人も
でてくるのでしょうか?
見たら見たでたいしたこと言ってないんでしょうけど。
科学の進歩に人間の中身が追いついてないような気がします。

さて今回の作品は「原始富士」。
ひさびさに普通に絵を描いてみました。
よく「赤富士」という夕焼けに染まった富士山の絵があって、
鶴が飛んでるのですが
「なんか違うもんが飛んでたら ええかなあ」と
プテラノドンにしてみました。
描いてみると違和感なく、普通の恐竜図鑑の挿絵みたいに
なってしまいました。赤富士じゃない方がギャップがあったか?
日本画の岩絵の具とか油絵とかではなく、画用紙にフツーの
水彩絵の具で描いたのも ちょっと力不足感丸出し。

アイデアに対して技術が追いついてない~。
コレまた反省です。

「ポケット大奥」

昔から僕はむっつりスケベだとか、喋るといちいちヤラしい
と言われきました。本人はいたってノーマルなつもりなのですが
マニアックだと思われ、変態と紙一重呼ばわりされたこともあります。
確かにエロ系雑誌のチェックは怠ると取り残されたような
焦りにも似た気分になるし、スポーツ紙の体験レポートの文体などは
すぐにコピーできる自信はあります。クソの役にも立ちませんが。
ただ、作家として発表する作品でひどい下ネタ系のもは少ない方だと
思います。多分本気で そっち方面の作品を作り出すと
自分で客観的になれないくらい没頭し、かつすぐにネタ切れしそうだし
また、他人が僕のすごく個人的な下事情を見せ付けられても
そんなんオモロイか?とも思うのです。て言うかすごく安易やしね。
という訳でH系のネタは僕の心の中の密かな楽しみに取っておこう、
と言った感じでしょうか。

で、今月の駄美術「ポケット大奥」。現代に殿様(バカ殿)がいたら?
というテーマで去年開催した展覧会に出品した作品の一つです。
もし今、大奥みたいな制度など作ったりしたら、女性差別と
反対されてしまうだろうし、かといって殿様的には願望はあるし、
といったジレンマを解消するグッズとして作ってみました。
中身はエロ本のコラージュと、筆文字で「若草山」とか「嗚呼」とか
何か判らないけど、やらしそうな言葉が書いてあるだけです。
殿様にはこれを懐に忍ばせて頂いて我慢してもらおうという考えです。
エロ系は作らないと思っていたのですがやってしまいました。
作るのは楽しかったのですが、出来栄えはやはりプロにはかなわんなあ、
と思いやはり自分は一エロファンであったほうが向いてるなと思った次第です。   

「花街の女神」

「24」ってのがヒットしましたが、レンタル店に行くと海外ドラマが
ドバっとありますね。
しばらく「LOST」をよろこんで見ていたのですが、シーズン2も
制作されて、しかも「1」は大して解決しないまま「2」に突入というのを
聞いて、一挙に冷めました。
大オチがあるからその行程や謎がおもしろいんですが、なんかシリーズを
続けるために水増ししてだらだら続けられてる様な気がして、8話くらいで
見るのをやめました。
「24」もおもしろいとは聞きますが、普通の映画12本分も
おもしろいのかなあ~とちょっと懐疑的。まあ見もせずにどうこう言うのも
アレなんでアレですが…。

あきっぽいので、駄美術作品ではあまりシリーズを続けるというのは
やってないんですが、“ミロのヴィーナス”を扱ったものは多い。
こないだ展覧会にいらした方と話していたら
「ヴィーナスいじらせたら、ふじわらさんですよね。」と言われました。
ヴィーナスいじり…。
ちょっとAVのタイトルみたいですが…。
確かに多いです。単純に美術の記号としてヒトにわかりやすいというのも
ありますが、なんか好きなんでしょうね。

今月の作品もヴィーナスいじりのひとつ「花街の女神」。
もともとヴィーナスは白いんですが、うなじに肌色を入れると、
白い部分が舞妓さんのおしろいのように見えるというもの。
よって この作品の正面はうなじ側なんですが、せっかくなので顔も
舞妓さん風に塗ってみました。わりと男顔?

ちなみに本当のミロのヴィーナスはうなじに後れ毛があって、
それを削ってしまったので純粋なペイント芸ではないですが、
髪型はそのまま。髪型もわりと日本風じゃないですか?
髪から垂れている花飾りのようなものは、似たものがみつからず、
かすみ草のドライフラワーをひとつづつ切って木工用ボンドで鎖のように
つなげていきました。手間かかった~。

「メインキャラ」

ここ最近TVも新聞も、なんでもかんでも値上がりで、
非常にうっとうしい話題ばかりですね。で、給料は上がるわけでもなし、
僕の家の値段が上がる訳も無くこれはマジで生活苦目指して
一直線なのでは?と考えだすと普段の仕事のモチベーションも下がる一方。
ああ、もう辞めたい、しばらく旅に出たい、探さないで欲しい・・・などと
全てをほっぽり出して逃げたくなります。
受験生の頃も、同じように毎日勉強しても、デッサンとかしても同じように、
こんな
ことしててもホンマに受かるんやろか?ああ、やっとれん、
ちょっくら漫画(エロ)でも読むか、お笑い番組でも見て気分転換するか・・・
と横道にそれてしまい一日を無駄につぶしてしまうことがしばしばでした。

ただ、同じ現実逃避でも、社会人になってからのそれはちょっと自暴自棄で
全てを失ってしまっても逃避したいイメージで、受験生の頃のは、
より快楽へ逃げていたと思うのです。どちらも現実逃避なので、
どっちがマシとか言えないのですが、やっぱり若かった頃のほうが
悩みの種類からして少し健全だったような気がします。
まあ、どちらも逃げてるわけで、全く成長してないとも言えるのですが。

さて、今月の駄美術「現実逃避まくら」。
2種類あって、それぞれ「ネガティブ」と「ポジティブ」があります。
前者は全て投げ出してしまいホームレスになった気分が味わえます。
道路を枕にする疑似体験です。もう一方はややこしい現実から逃れて、お花畑で
かわいい動物たちと夢心地で眠りたい、ウフフッ・・・みたいなかんじ。
本当に全てを投げ出す前に自分のタイプに合わせて、こんな枕で
一眠りされては如何でしょうか。

「ジャミロな くわい」

2007年です。
2003年にはじめたこのサイトも丸四年を越えて五年目に突入です。
ホントにみなさまありがとうございます。
おかげさまでなんとかやってこれました。この四年間、くだらない
ばかげたことばかり書き綴ってきましたが、今年からは心機一転、
キチンとした作品紹介をしようかと思・・・・・・・ったのですが
いかんせん作品自体がくだらないばかげたモノばっかりなので、
キチンと紹介すればするほどおかしなことになってしまうのです。
ぬーむ。
とにかくがんばりまっす。

さて作品は「ジャミロな くわい」。
ダジャレというか「くわい」というネーミングがひっかかっただけです。
さて作ってみようと本物の「くわい」をスーパーに買いに行ったら
時期が悪かったのか、どこにもない。しかたないのでネットで画像を集めて
適当に作りました。ちなみに素材は紙粘土にアクリル塗装です。
最近、正月用にか、よく本物を目にするようになったんですが、
ぜーんぜん違うやん!
まあ雰囲気ということで。
あ この「フンイキ」って「フインキ」って思ってました。変換しても
出てけーへんなぁと思ったら間違ってた。
ああ また話がそれましたが本年もヨロシク!