月刊駄美術図鑑 2006

「ぐれダルマ」

僕の中学生の頃、全国的に校内暴力というのが蔓延していて
通っていた学校もご多分に漏れず酷く荒れていました。
学生服も丈が長く、異常に太いズボンのツッパリたちが
授業中でも廊下をうろうろしてました。そしてヘアスタイルは
何故かパンチパーマで、ひさしというか、とさかというか、
前にせり出した髪型が主流でした。それは全然10代に見えない
おっさんぽいスタイルでした。
最近の若者のワルな人というのは多様化しえるみたいで、
ずいぶんオシャレっぽくみえます。

全然関係ないですが、大学の頃に当時の学祭の模擬店で
何をしょうかと考えてた中で、店員全員パンチパーマの店という
プランがありました。下っ端の店員役は昔のツッパリ風とさかパンチで、
店長は逆に、とさかやひさしの無い、北島三郎のような丸いパンチに
するということだけが決まってました。
なんとなく大将は、飾りではないパンチであることが大物感が あるなあ、
ということでそうなりました。しかし、本当にパンチパーマを
あてるとなると、やっぱり些かの抵抗もあり、企画倒れになりましたが。

さて、今月の駄美術は「ぐれダルマ」。
ダルマというのは悟りを開くために、じっと忍耐強く修行を
続けているという シチュエーションであるのですが、このダルマは、
あまりに退屈な修行に嫌気がさして不良化した、気の短いダルマです。
まだまだ若造なのでヘアスタイルはとさかヘアーです。修行はしてるが
「やんのか、コラァ!」
と、凄んでみせるやんちゃオブジェです。



「ちょっと誰か・・・」

時代に応じてモノをつくる材料もかわってきてますね。
大学時代は専門の塗料屋で樹脂を買ったり、木材屋で材木を
注文したりしてたんですが、卒業してからは
すっかり東急ハンズなんかで買い揃えるようになりました。
そしてそして ここ最近は100円ショップに移行しつつあります。
ああ どんどん美術作家から離れていく~。
んで、そういうものって、前もっていろいろ買いあさっておいたのに
  完成せずにお蔵入りっていうことが多い。
安く買っても結局ゴミになってしまうんです。
「安物買いの銭失い」を日々実践してます。

以前からラジコンカーの内部機構を利用したり、既存の商品を
改造したりして作品にすることがあったのですが、今回の作品も
そのパターン。アレンジ芸です。
食玩のセミの幼虫フィギアを使用。150円でこんなクオリティの
こんな地味なヤツのフィギアが手に入るんですからすごいことです。

実はこれは学生時代につくったモノの再制作。
当時はそんなすぐれたフィギアなんてなかったんで 実物のセミの
幼虫のぬけがらに樹脂を入れて固め、背中を埋めてつくったのでした。
ちなみに当時作ったものは大学の教授が欲しがったので、気前よく
あげてしまいました。



「乱入者『ヘア』」

これは何か?これは陰毛の縫いぐるみです。巨大な。2,3メーター位の。
ビッグアンダーヘアです。あまり恥ずかしがってもしかたないので
再度書きます「おっきな下の毛」です! ああ、すっとした。

このモチーフになってるあの毛ですが、体から離脱した瞬間
ところかまわず出現しては人を困惑させています。
例えば、彼女と気の利いた店で食事などしてたとして、
そのオシャレなテーブルの端っこに出現するやいなや、
見つけてしまった人は、その毛をどうやって排除しようかと
ヤキモキして、オシャレな会話どころではなくなります。
他にも、高尚な画集を見ているときに挟まっていたり、
友達に借りたノートの中や、何故か頭のてっぺんや、ラーメンの
中とか、もうそれが出現するだけで、気まずいやら恥ずかしいやらで
すべてのムードぶち壊しといった小さなボディにパワー全開!
といった風情で登場します。

何故こんなのを作ったかというと、この頃は「二等兵さんの作品で
元気をもらいました!」的なことを度々言ってもらえるようになり、
うれしい反面このままではなんかヤバイなあ。もっと毒のあるものを
作って「なんじゃこりゃ!?」と思わせなあかん、甘っちょろい期待は
裏切らなあかん、と思いが昂じてやってしまいました。
展示してみると見事にスルー。まだまだ口にするのも
タブーなのでしょうか。
「これなんですか?」と聞かれ一番気まずいのは僕なのでした。



「思い出しベア」

最近、なんかテレビで言ってることが聞き取れないことがある。
ボリュームの問題じゃなくて、聞こえてるけど意味がわからんというか、
意味のある日本語に聞こえへんというか・・・。
長澤まさみがカルピスウォーターのCMで「私ウソつきました」つって
海に入って「ふはいじゃけのうにばー!」みたいなこと叫ぶやつ。
あれ なに言うてんの?
あとチョーヤのウメッシュのCMソング。なんか日本語っぽいんやけど、
「でヴぉっと きがもしていいのよ~ じゃけ~に~べな~」とか言うやつ。
なんか曲の途中から途中までやし、何回聞いても なに言うてるかわからん。
世間の人はわかってんの?私だけ?

聞き取れないのと同じく、思い出されへんというのもあるなー。固有名詞が。
こないだも「デューク更家」って名前が出てけーへんかって苦労した。
これって老化がものすごいスピードで進行してるんか。
そのわりに昔の曲の「異邦人」とか「銃爪」とか 歌詞なしですいすい歌える
けどな。

昔、「笑っていいとも」に「私のメロディ」ってコーナーがあって、
そこに出てた普通の主婦の替え歌も覚えてる。
小柳ルミ子の「お久しぶりね」の替え歌やってんけど「6年ぶりに
こどもを産んじゃった!」ってやつで、なぜか頭からはなれず いまだに歌えます。
オレの記憶装置はどうなってんのか。

さて作品は「思い出しベア」と呼んでるけど正式名称はつけてないモノ。
「たれ流しベア」と同じく専門学校の内装として作ったもので、壁に貼られた
インフォメーション用のボードがどんどん小さくなっていって
クマの想像になってます。
その後、このクマはどのようなインフォメーションを思い出したのでしょうか。
学生の方はぜひレポートして欲しいものです。

「不良外人」

僕が小学生だった頃は、外人さん(主に西洋人)がすごく
珍しい存在で、京都や奈良に遠足に行った際、外人に
遭遇するや否や同級生達と「ハロー!ハロー!」と呼びかけまくり、
外人さんも嫌な顔せず答えてくれた日にはもう、すごく自分が
国際的な人間になったかのような錯覚に陥るほど、それは貴重な
存在でした。
しかし月日が経ち、就職したてで東京にいた頃、
八百屋で野菜を物色する黒人や、ラーメン屋で起用にラーメンを
すすりながらTVを見てる外人を見たときに、なんとも自分の中で
有難がっていた対外人妄想がサラサラと崩れていったのを
覚えています。
郷に入れば郷に従い過ぎなのもどうかなと。

さて、今月の駄美術「不良外人」。
子供のおもちゃに小さいビーズを並べてアイロンでプレスして
いろんな絵や形にするものがあるのですが、それを用いて
作った作品です。そのビーズが入っている箱の作例が
いろんな国の子供の形があり、インディアンと黒人とか
かわいい白人とかもあったので、大人の僕が作るなら
ちょっと不良の外人かなあ、と思いチャッチャと作ったのが
これです。
日本に来てわるさをするイメージをチラッと見える松の枝で
表現しました。たまたま見に来た白人にウケがよかったのですが、
何が面白かったのでしょうか。

「とろけるデザイン」

携帯電話の機種変更するときに、店でデータをコピーしてもらうと、
着メロとかムービーとか自分でダウンロードして購入したやつは
コピーでけへんと言われる。
あれ?データの数が合ってないなと思ったら これが足らんのや。
「著作権の問題で・・・。」って、おかしない?

俺の携帯で俺が買った着メロを俺の新しい携帯に移し変えるのに
なんの問題があるのか?
車を買い換えるときに、車内に飾ってある神社のお守りやぬいぐるみは
新しい車に移せるやろが。
「それはできません。古い車から出せません。」
とは言われへんわな。
コピーしてデータを増やしたいんじゃなくて、ただ移したいのに
それがでけへんからコピーってカタチになってるけど、前の携帯は
使わんのじゃ。そっちに残さんでええから新しい方に入れてくれって
思ても、技術的にそれはでけへんらしい。ぬー。
それで「著作権の問題で・・・。」か。なんか ふに落ちん。

こないだ携帯の明細見てたら、「有料コンテンツ使用料157円」って
いうのがついてて、さかのぼって確認したら毎月ずっとついてる。
もちろんこんなオッサンがいちいち新曲をこまめにダウンロード
しているわけはなく、使っていないはずやのに。
で、確認してみたら着メロサイトの料金やった。はて?着メロ?
よくよく考えてみると、買ったときと機種変更したときに
おきまりの着メロ(桜庭和志のテーマ)を単発でダウンロード
したことはある。5曲150円で。あれは買いきりじゃなくて、
月額制やったんか。何年もぼーっと払ってたわ。ちっ。
そんなこんなで この暑さと怒りで携帯も溶けてもうたわ。

ということで
今回の作品は「とろけるデザイン」。
2005年3月のこのコーナーで紹介した「柔軟なデザイン」と
ともに3部作として発表したモノのひとつです。
暑~い夏にぴったりの作品。「柔軟なデザイン」と同じように
手間ヒマかかってます。
ちなみに自分で使ってる携帯はこれではなく「infobar」です。
そろそろ換えるかー。

「○○ちゃん」

もう3年くらい前かもしれませんが、多摩川に紛れ込んできたアザラシの
タマちゃんていましたよね。
動物学者が「このままだと汚染された河のバイ菌におかされて
衰弱死する。」と真面目にコメントしたり、餌あげる人や見物人が
大挙押しかけたり、あげくにタマちゃんをテーマに歌を作ってCDを
発売したりと、古い言葉ですが「タマちゃんフィーバー」を感じさせる
出来事でした。
今頃は北の海で元気にしてるのでしょうか?ちょっと気になります。

ところで「フィーバー」って今はあまり使わない言葉ですかね。
パチンコぐらいでしょうか。最近ではアスファルトに生えた大根などが
ちょっとフィーバーを予感させてワクワクしたのですが、タマちゃん
ほどではなかったですな。「ど根性大根」て、名づけが失敗かと。

さて今月の駄美術「○○ちゃん」。ちょうどタマちゃんフィーバーの頃に
作ったタイル画なのですが、あの頃多摩川以外に紛れ込んだアザラシに
ついてその地名にちなんだ「○○ちゃん」と名づけられ、物凄い二番煎じが
横行してました。
これはアザラシが現れた場所によって名前が変わるなら基本は
フレキシブルな「○○」にしておけば、見る人が勝手に
「ここは京都だから“京都ちゃん!”」とか「射手ちゃん」とか名付けて
もらえるなあ、と思い制作しました。
今となっては何がオチなのか思い出すまで時間がかかる作品になりましたが、
僕らの作品はいつも大体そんなかんじです。

「夏用」

うちのDVDレコーダーってムカつくねん。ハードディスクに録画したものを
DVDにダビングすることは当然できる。逆にそのDVDからハードディスクに
ダビングしようと思ったらこれがでけへんねん。
たったいま自分がダビングした映像やのに。
市販のDVDソフトのコピー防止か知らんけど、そんなんソフト側に
コピーガードついとるやろが。
自分で左から右にダビングしたものを なんで右から左に戻されへんねん。
DVDにダビングしたものを再編集しなおそうと
思ったらでけへんやん。
もぉぉぉ~。

そんなこんなで怒ってたら暑い暑い。
しかも今日は30度を越える真夏日やって。

さて作品はこんな日にぴったりのアイテム。タイトルは「夏用」。
裁判の判決が出たときに走って持ってくる“あの紙”が、あまりに
そっけないので装飾してみました。
布地にアクリル絵の具でちまちまと手描きしてたんですが、
あとあと考えたらプリントゴッコみたいなんで版を作って
刷りゃあよかったなと。
また気が向いたら作るかな。

「たれ流しベア」

最近、新聞やニュースでネット上に個人情報が
流出してしまう事件が多発しています。
個人のデスクットップの内緒のデータなら自業自得の
部分もあるけど、警察や企業の持ってる不特定多数の
個人情報が漏れるのはなんとも怒りを覚えます。
知らないところからDMが来たりするのも、俺の住所が
流れたせいなのかと、饅頭屋やお見合い相手探しの
ハガキを見るたび思います。
まあ、もともとこんな不安定でしょっちゅうトラブルを
おこしたり、ウイルスに侵されたりするパソコンに
そんな大事なものを保管させているのがどうかと。
ちょっと考えれば解りそうですが。

さて今月の駄美術は「たれ流しベア」。
情報たれ流し事件にちなんで掲載しましたが
事件の本質とは全く関係なし。
この作品は展覧会で発表したものではなく、専門学校の
トイレの入り口付近に何か作品を設置して欲しいと
いう依頼で制作したもののひとつです。
トイレだけに「たれ流し」という最悪の発想ではなく、
「手を洗った後は水道の栓をちゃんと閉めてね!」
と蛇口から出てきたクマがメッセージを送っている
ファンシーかつ余計なお世話な作品です。  

「SF酉の市」

まあいろいろなものを考えたり作ったりしていると、いろんなものを
発明・発見をした人たちはスゴイなぁと思うことがあります。
普通に使ってるものもあらためて見てみると
スゴイものが多い。
「メガネ」ってスゴくない?
視力を矯正する為にレンズを目の前にもってくるってコト自体
すごいのに、鼻と耳を利用してそこにレンズを固定するなんて
すっごいやん!完成形を見てるからなんとも思わへんけど、
「物が見づらいなあ」ってトコからスタートして、よくこのカタチに
なったなあとつくづく感心。耳なんてモノを聞くための器官やから
こんな形状じゃなくてもよかったのに、ええ場所にええ形でついとる。
カエルみたいにただ穴があるだけやったら、こんなメガネは
生まれてけーへんかったやろう。
よーできとる。

他人の作品やデザインを見ても「ええなあ スゴイなあ」と思うものが
いっぱいある。
スターウォーズの「タイファイター」や、ギーガーの「エイリアン」の
デザインとか もうスッゴイやん。
25年以上も前にこんなもんをつくってたなんてスゴイわ。うーむ。

そんな大好きな「エイリアン」へのオマージュとして作品を制作。
つーか「フェイスハガー」
(エイリアンの幼体)が
『熊手』に似てる!と思っただけでした。

「ジャパニーズホラーベア」

個人的に最近の耳障りな言葉として「キモ可愛い」と
いうのがあります。
「気持ち悪いけれど、何故か惹かれる可愛さがある。」と
いう意味でしょうか。
同じようなものに「痛気持ちいい」とかいうのもあります。
なんでも安易に組み合わせたとしても、伝わればそれでいいと
いうことでしょうか。日本人なら2つの相反するものが
同居する微妙な気分をオリジナリティのある言葉で創作すれば
よいのにと思うのですがいかがでしょうか。
「ギンギラギンにさりげなく」とマッチが言い出したころから
乱れたのでしょうか、現在の
日本語は。

「キモ可愛い」があるなら反対の「カワきもい」とは
言うのを聞いたことがありません。一見可愛いが
よく見ると気持ち悪い、というのも存在すると思うのですが。
たとえばサンリオのキャラクターのマイメロディとか。
なんの表情もないあのうつろな目。カワきもくないですか。

さて、今月の駄美術「ジャパニーズホラーベア」。
簡単に言うと、日本の怪談「耳なし芳一」のテディベア版です。
怨霊から身を守るために全身に「森のくまさん」をエンドレスで
書いたのですが、耳だけ書き忘れたため、引きちぎられ
持ち去られた様子を再現しました。
「きも可愛い」作品を目指したのですが、「カワきもい」に
なってしましました。

「二等兵式電気スタンド」

あけました。あらためましてあけましておめでとうございます。

さてさて
ニュースや新聞では株価が上がって景気がよくなってきたと
言っておりますが、ほんとにそうなん?
なんか実感はまったくありませんが。
ちょっとバブルっぽい気がします。
にわかトレーダーのド素人が一攫千金を狙ってバンバン株を
買ってるだけで、そのうち大コケして、儲かるのは
証券会社だけなんじゃないのぉ~ と、
新年早々ネガティブシンキング大暴走中。
こんな暗い社会(脳の中?)に明かりを灯せと
つくりました電気スタンド。

傘の中に電球はなく、主軸が光るというものです。
最初は「テーブルランプ」をもじって「ラーブルテンプ」と
言ってたんですが、あまりに言いにくくて意味がわからんので
やめました。
展覧会では意外性をより感じてもらおうと、スイッチを
押したときだけ光るようにしていたのですが、家に持って帰って
普通に点けっ放しにしてたら、熱で軸が曲がってきました。
この材質は熱に弱かったのね。
またひとつ勉強になった作品でした。
この経験が活かせる日はくるのか?

本年もヨロシクお願いします。