月刊駄美術図鑑 2005

「懲罰のれん」

たばこのパッケージが酷いことになってます。
法律が変わって、いかに体に害があるかを決められた
大きさの文字、しかも表面の半分近くの大きさで
でかでかと表記しないといけなくなりました。
デザインは半分で商品のイメージをポジティブに
イメージを表現しているのに、その下に「これは
ものすごく体に悪いよ!知らんで!」というノリで
書いてある。僕はたばこを吸わないのですが、さすがに
なんじゃこりゃと思いました。なんたる矛盾。
二重人格、ジキルとハイドですか、真夜中は別の顔ですか?これは。
そんなにたばこを広めたくなきゃ、販売数量やアイテムを
どんどん絞るとかすればいいのに。実際、喫煙場所は
減ってるわけで、同時にたばこそのものの数を減らさなあかんわな。

さて愚痴は置いといて、今月の作品「懲罰のれん」。
食堂等の店先に架かっている「のれん」とは、
そもそもお客に対してウェルカムのスタンスをとるのが常識のはず。
しかしこの「のれん」は、腹を空かして歩き回った末に見つけた
店先でいきなり「めしぬき」と宣言。有無を云わせぬ命令口調。
無実のはずがいきなり飯抜きの懲罰を与えられる代物。
「お店やってるよ!」とフレンドリーな姿をしつつ、
「お前に食わす飯はない!」といった、最近のたばこみたいな
わけのわからん作品です。



「手押し名車」

昔、母親が「シブがき隊は誰が誰かわからへん。」と言うてて、
「なんでやねん!ぜんぜん違うやん!」と思ってましたが、
いよいよその状況がわかるようになってきました。
V6、嵐はギリギリ。KAT-TUN、関ジャニ∞にいたっては 
さてどうしたものかという感じです。
正確には「覚えられない」のではなく「どうでもいい」のでしょう。
全く興味がないのです。覚える以前に頭を通過しているようです。
こないだプロ野球12球団の正式名称を書いてみようと試みたら
6割くらいしか書けませんでした。興味ないんです。
つーか 球団名変わりすぎ。

さてさて自動車メーカーのマークを作品に取り込んでみたんですが、
興味のない人には全く意味がわからなかったと思います。
ただの元気な動物としか思わなかったでしょう。もっとベタを
目指すべきか、心が揺れています。



「こけしバット」

個人的なことなんですが、作品制作にあたって、なるべく二番煎じ
はしないと決めています。作品のバリエーションとしてなら展開案も
作りますが、できればアイデアの使い回しは
したくないのです。

多分一度そうするのは楽になるでしょうが、ずるずり同じ事をやってしまい
限界が早くるし、
人からもうマンネリか?とか言われるのは嫌なので。

などとえらそうなことは日々考えてはおるのですが、実は数年前に
その禁を破ってしまい
ました。「こけしアレー」がわりとウケたので調子乗って
作ったのがこの「こけしバット」。
こけしアレーよりも無理の無い発想で、 けっこう見栄えもリアルこけしの近いのですが、なんか薄いのです。
やっぱり二番煎じ的なものは作ってても少々テンションが下がってたのは
事実。気を付けねば。


「デコわりばし」

いやいや ほんとにね いつも以上に制作が進んでないわけなんですよ。
展覧会まで一ヶ月切ってますが…。
よく夏休みの宿題状態といわれますが、まさしくそんな感じ。
しかも年々ひどくなっているような・・・。
思いつくネタはいっぱいあるのですが、どうにも具体化できていない。
取りかかっても完成せずにそのままオクラ入りってものも多数存在します。

「誰でもピカソ」のアートバトルに出場してたときも、当日、スタジオで
初めて完成するってものもありました。「カタカタDX(2号機)」なんて
配線がよくわからず、ぜんぜん動かなくてかなり手こずり、動かないまま
収録日を迎えてスタジオに。控え室でさらに苦労してなんとか繋いで「動いた!」
っと思った瞬間に「リハーサルでーす!」と呼ばれました。ものすごいタイミングで
ピンチを乗り切った瞬間でした。

意を決して早めに制作するものも たま~にあるのですが、完成後、どこかに行って
しまって、探すのに一苦労というのもありました。
この「デコわりばし」。早くに ちまちま時間をかけて作ったのですが、あまりに
早く作ったので完成後に収納したところを忘れてしまい、さんざん探し回るも行方不明。
そのまま搬入の朝を迎えて、出発前に5分くらいで適当に作り直しました。
(めちゃテキトーに)
そのため、この初代バージョンはギャラリー射手座では展示できなかったものです。

今年も何点かはすでにできているものもあるのですが、どこに置いたかなー???

「ミニマル自転車」

最近、おじいさんにも手軽に使えるシンプル携帯のCMが
よく流れてる。僕は以前から携帯に複雑な機能が付加されて
いくのは違うと思っていたので、「やっと判ってくれたか。」
と、まるで自分のニーズが反映された商品であるかのように、
その登場を喜びました。て、ことは俺は老人なのか。

しかし一方では、機能がさらに付加されて携帯がクレジットカード
のような使われ方までしていくとのこと。カメラ、TV,ビデオ、
パソコン、音楽も聴けて、さらにカードとして使えるなんて。
これにあと、洗濯機、掃除機、冷蔵庫、クーラーの機能が
付いたら、狭い我が家もどんなに広くなることだろう!
などと妄想してしまうくらい携帯の進化は早すぎる。
ただ、ほんまにそんな多機能のニーズってあるのか?
カード代わりだったとしたら、ますます忘れたり、落としたり
するのが怖くなるよな。そんなことよりもバッテリーや本体を
丈夫で長持ちにしてもらったほうが、よっぽど有り難いのですが。

さて、今月の作品は「ミニマル自転車」。最近買った自転車が
スポーツタイプのもので、ママチャリと比べるとやたらデリケート
で複雑。変速もいっぱいついてるのですが、なんかあまり必要性も
感じません。やっぱりシンプル自転車=ママチャリは優秀やね。安いし。
で、この作品はさらにシンプルさを突き詰めて、サドルの真下に
車輪が一つ。ベルは腕時計のように手に着けます。たったそれだけ
のいたってシンプルで究極のミニマルな自転車を作ってみました。
ただ、乗りこなすには、どんな自転車よりも鍛錬を要しますが。

「カタカタDX」

無事、京都造形芸術大学でのレクチャー終わりました。とにかく初めてのことで、
終わってから「ああ言えばよかった」とか 「もっとこう言いたかった」とか
反省しまくりです。

レクチャー内容とさらに言いたいことをまとめると・・・

「美術と娯楽」というテーマだったんですが、結局、どちらもハッキリした定義が
あるわけではなく、イメージで「美術は高尚なもの」「娯楽は低俗なもの」と
思ってる人が多いと感じる。ほんまにそうか?
僕が思うのは「娯楽」って人生を楽しくするものなんじゃないの?ってこと。
スポーツであれ、マンザイであれ、絵画であれ、人生を豊かに彩るものであれば、
それは「娯楽」といえるのではないか?
つまり「娯楽」という大きいものの中に「美術」も含まれている。
「美術」が 「娯楽」よりレベルが高いなんてナンセンス。

大昔の貴族が画家に肖像画を発注したのや、北斎の浮世絵が大衆に受け入れられたの
ってまさに「娯楽」やん。今の人間が勝手に「美術」として必要以上に崇めてるだけで。
モノそのものの価値とは違う価値観が生まれてるのかな。

野球のうまい人は野球をやり、歌のうまい人は歌を歌い、絵のうまい人は絵を描けばいい。
それで自分の人生や他人の人生を豊かにすることができれば、それでいいじゃないの。

「美術はこうじゃなきゃいけない!」なんて堅苦しく考えないで、楽しめばええと思うけどなあ。
もちろん我々の作品を見て「美術じゃない」と言いたいのはわかる。なぜなら我々も他人の
作品を見て「これは美術じゃない!」って思うことあるもん。ははは。美しくもおもしろくも
ないモノ見たらそう思う。人に見せるんならなんかないんかと。
だから我々の作品を見てぜんぜんおもしろくない人(人生が豊かにならない人)は
「これは娯楽(美術)じゃない!」と言っても
いいのかも・・・。

さて今月の作品は「カタカタDX」。こどもが遊ぶ押し車にカーナビをつけて、
今どこを歩いているかわかるようにしたもの。二等兵史上最高の制作費だと思う。
しかも展覧会用と
テレビ(誰ピカ)用に2台制作した。

んで おもしろい?

「シコシコセブン」

「やいやい言うな、娯楽じゃボケ!」という展覧会を開いたときに
初心に戻って趣味で作ってるような作品を作ろうと心がけた。
この展覧会の前年、見に来た人に「これは美術としてどうか?何か違う。
私は作品を作ることで世の中が良くなっていくことを願って作るetc・・・」
とかなんとか言われ、だから「駄美術」と名づけているのに分ってもらえず、
頭の固い人にはほとほと困らされた。
結局2時間ほどその人と議論し、結論など出なかったのだが、すっかり疲れてしまい、
その時ふじわらがつぶやいた言葉が翌年のこの展覧会のタイトルとなった。
「やいやい言うな、娯楽じゃボケ!」全くもってその通り。

で、翌年制作したのがこの作品。タイル画作品を複数作ったのだが、めちゃめちゃ
楽しくて、時間を忘れて作った。何作か作るうちに、自画像みたいなのを作ろうと
思い立ち、今の気分「タイル画みたいな細かい仕事をシコシコ作る俺」を手テーマ
に制作。どうせなら、同じものがたくさんある方がバカっぽいし、シコシコ感が
出るかもと思い、7点作り「シコシコセブン」と名づけた。
並べてみると異常な空気を醸し出し、こんなくだらないものを作ってお疲れさん、
と言いたくなる仕上がりになった。
これがはたして美術だろうか?深みはあるのか?
何を社会に訴えてるのか?
いや、これは・・・「やいやい言うな、娯楽じゃボケ!!」

「その他のシャア専用」

日本人って美術館やギャラリーであんまりしゃべらないですね。静かにしていないと
いけないという強迫観念があるようで。我々の展覧会でもよく芳名録に
「笑いをこらえるのが大変でした。」とか感想をいただくんですが、
声出してくれてぜーんぜん結構。
みんなでわいわいやってくれたらと思います。
まぁたいがい、目つきの悪いおっさん二人(我々)が端っこで見てるんで
怖いんでしょうが・・・。

さて今月の作品。
ROCKETでの展覧会にも展示していた「その他のシャア専用」。写真コラージュ作品です。
歯ブラシに、ビニール傘に、ブリーフに、「シャア」とマジックで書いてあります。

展覧会に来ていたアベック(言い方が古い)の男の子がコレを見て、女の子に
「ガンダムに出てくるキャラで・・・」と一所懸命説明していました。
そうそう、そうやって作品をきっかけにいろいろ話してくれるのはいいですね。
美術作品というよりコミュニケ-ションツールという位置づけで。
にしても もう「シャア」を知らない世代が街中を闊歩しているわけです。うーむ。
もともとは「ケナログ」って口内炎の薬の名前を見て「モビルスーツみたいやなぁ 
シャア専用ケナログとかありそうやなぁ」と言ってたのがきっかけで、「その他」を
考えてみたのです。

こんなこと言うてるからオフィシャルの「ガンダム展」には呼ばれないんだと思います。

「うなされて」

始まりましたね、「愛知万博」。実はあまり興味は無くて、新鮮に感じれなく
なったのは自分が年をとったせいかとも思います。興味無いながらもTVで
ニュースでその映像を見てると、いやーロボットの動きて進化してますな。
めっちゃスムーズ。元気な人間よりもスムーズ、滑らかちゃうか?と思って
しまうほどです。僕がイメージするロボットの動きは例えるなら、道頓堀の
「くいだおれ」人形や「かに道楽」の看板みたいにぎこちない反復運動や、
せいぜい風見しんごのブレイクダンスのそれです。こんな例えがおじいさん
みたいやと言われる所以でしょうか。

で、今月の駄美術作品「うなされて」。これもベッドの上でクマちゃんが
ねりねりと身をよじる反復運動を続けます。手足と顔の動きが微妙で
なにか悪い夢にうなされてるような様子です。一見複雑なメカが仕込んで
あるように見えますが、実は単純な左右に振れるモーターが動力になってる
だけのシンプルな構造です。ぬいぐるみをルーズめに作ってるため、
たまたま微妙な動きをしてるだけなのです。多分ロボットでこの動きを
再現しようとしたらすごく難しいシステムになるのでしょう。やったね!

「柔軟なデザイン」

先日、スーパーモデル、ケイト・モスのヌード肖像画がロンドンのオークションで、
393万ポンド(約7億7200万円)で落札されたらしい。
こんなニュースが流れると、 「美術って金になる」とか「俺もいつかは!」とか
思うヤカラがいるんじゃないかと心配になる。
そんなに儲かるか?美術?

先日の展覧会のときに、学生と話していたら、就職せずに作品を売って
生活していくつもりみたいなことを言っていて「はぁ?」と思った。
純粋に美術作品の制作だけで生活できてる人なんて何人いるだろう。
名の売れてる人でも大学の教授をしていたり、なにかの協会員みたいなことで
別の収入を得ている人が多いと思う。
きっと「美術作品だけ」の人はプロ野球選手より遥かに少ないと思われる。
自分は美術の中でプロ野球選手レベルの位置にいると思ってるのか?
「コレクターが買ってくれるかも」なんて思ってるのかもしれないが、
毎年全国の何校もの美術系学校から何千人(何万人?)という卒業生が生み出され、
作品を発表しているのに、それらを全部食べさせていけるほど美術コレクターって
いるのか?
まず、自分が他人の展覧会に行って、美術作品を買ったことがあるのか?
自分が買ったことも無いようなものを作って生活できると思ってるのか?
甘い!とにかく甘い!

我々も展覧会の時には値段を付けているが、売れないね、そりゃもう
露天で売ってる水で膨らむ怪獣の方が売れてるだろうと思うもの。
特に我々の作品は見た目が工業製品や雑貨に見えるから、
すっごく安く買えると思われるらしく、価格を聞かれて答えると
ちょっと驚かれます。
そりゃさ~ 一個一個作ってんだもの。

たとえばこの「柔軟なデザイン」。制作手順をざっくり説明すると
まずヤフオクでこの携帯のモックアップ(展示用モデル)をゲット。
→ゴム型を取るため、箱に入れて粘土に半面埋める。
→離型済を塗って、シリコンゴムを流し込み固める。
→半面が固まったら、裏側から粘土を取り出し、離型済を塗ってもう半面も
シリコンゴムを流す。
→出来上がったゴム型に注型用樹脂を流し込む。
→硬化途中の樹脂が柔らかいうちにゴム型から取り出し、ぐいっと曲げる。
→固まったら、樹脂の気泡をパテ埋め。表面処理。
→塗装。今回はボタンのグリーンから。似た色を調合してまず塗る。
→ボタン部分をマスキングしてシルバーを塗る。
→シルバー部分をマスキングして黒を塗る。
→マスキングして液晶画面部分にスモークブラックを塗る。
→マスキングして液晶画面部分のフチに黒を塗る。
→着信ランプ部分に乳白色を塗る。
→ボタンの数字等の表記のデカールをつくる。(今回は他人に依頼)
→デカールを貼って、はがれないようにトップコートを塗る。
とまぁこんな要領でやっとひとつが完成する。
とにかく手がかかる。
今回は数万円の値段をつけていたが、原型製作会社などに発注すると
10数万はかかるだろう。

ちなみに二等兵作品には値段のつけ方があって、
1.手を動かした時間の時間給(同年代の平均年収から算出)
2.実費(材料費、運搬費等)
3.クリエイティブ料(アイデアなどを含め、作品の価値に対する対価)
の合計に画廊の取り分を加算して決定しています。
まぁどうやっても雑貨のような値段にはならないのですが・・・。

長々と書いていたら途中で口調が変わってたりしますな。
次回展覧会ではぜひご購入を!

「胴長矯正下着」

人が外見を気にする欲求は尽きることがない。
顔面整形、豊胸手術、脂肪吸引など、考えたらぞっとするような手術さえ、
今より綺麗に、そして理想のスタイルに近づく為に平気で受けてしまう。
メスを入れるのがいやな人でも、足が細く長く見えるパンツなどなら
気軽に取り入れてたりするだろう。また、体中の贅肉を寄せ集めて、
下着にしまいこんで無理やり、かっこいい体型に見せる矯正下着なんかも、
試してみたい人や、実際買った人などは多いのでは・・・・

と、何か考えがあるかのような書き出しですが、
作ってみたのは「胴長矯正下着」。
あらゆる肉体的なコンプレックスの中でも、もうどうしようもないものの
一つだと思います。
手術で背骨を2,3個取り去ることが出来るなら別でしょうが。
そんな、あきらめムードな気分を少しでも楽にする駄美術下着です。
ちなみにこれと、小顔マスクを装着し、ふじわらの披露宴にでました。
矯正器具というよりSMフェチっぽくなってしまいました。

「テディ○○」

あらためまして 新年あけましておめでとうございます。
いよいよ二等兵ブレイクに向けての脱力パワー炸裂の展覧会が1月28日から
始まります。
この展覧会の案内を見せたときに一番「これなに?」と聞かれたのが多かったのが、
この作品「テディ○○」です。
制作したのは目・鼻・口のパーツだけ。これを取り付けることによって
その空間自体が作品になるというもので、目だけで直径50センチくらいあります。
建物や乗り物にとりつけて楽しむことができます。
取り付ける場所によって「テディ ギャラリー」「テディ 観光バス」
「テディ裁判所」と名称がかわるフレキシブルアート。

ファンタスティック・プラスチック・マシーン田中知之さんもお気に入りのこの作品、
「もっと小さいサイズを作ったら?」とアドバイスもいただきましたが、
まだ手を付けてません。すんません。今年はがんばります。
展覧会にはミニサイズも登場するかも・・・。