月刊駄美術図鑑 2003

「かっとびハト車」

この作品は、僕の中で「日本の民芸シリーズ」と呼んでるジャンルの一つです。 これまでにも、既に紹介したこけしや能面を使った作品と同じラインのもので、信州土産の鳩車をベースに作りました。

もともと鳩車は空を飛ぶ鳩の羽の代わりに 車輪をくっつけた強引で残酷な造形の郷土玩具です。しかしそれを感じさせない 滑稽な可愛さがあって、日本のお土産品のなかでも特に気に入っています。

さてそんな鳩車をいかに改造して作品化してやろうか、と考えた時に、やはり 車なので改造車バリバリのイメージ、ヤンキー車でいこうと思いました。 くちばしをとがらせ、ハの字のシャコタンにし、つり目でウイングを付け もちろん竹やりマフラーを装備してみました。転がしてみると車高が低く なり過ぎてお腹をこすってしまい、スムーズに走りませんでした。

今にして 思えば、太い車輪にしたり、ボディーにブラシ画をペイントするとかしても よかったかもと思っています。



「猫が生まれました」

数年前、「人生ゲーム平成版」を買った。
住宅街で猫よけのペットボトルが流行ったころで、人生ゲームの中にも
小さいペットボトルが入ったりしていた。

で、友達と集まって「さぁ始めよう!」と取説を読み始めたら、これが
複雑複雑。
色んな要素を詰め込みすぎて、全く理解できない。こんな複雑なスゴロクが
かつてあっただろうか?
結局、テンションも下がり、プレイせずに箱を閉じてしまった。

その後も、シリーズで発売されていたので、そこそこ売れていたのかも
しれないが、買った人はみんなプレイしたのだろうか?
あの取り説を理解した先にはものすごい楽しさが待っていたのだろうか?

だんだんと邪魔になって、捨てることにしたのだが、なんとなく
コマは取っておいた。
それを今回、作品のベースとして使ってみたのだ。
地球にやさしいリサイクル作品。
これで捨てられた本体の方も浮かばれるのでは・・・。
ちなみにこの猫のコマはシルバーです。



「ミニマル裁判」

この作品を作ったのはオウム真理教事件がほぼ解決し、裁判が
行なわれようとしていた時期でした。ありとあらゆる犯罪を犯した
当事者達を裁くのに、日本の裁判制度では何十年もかかるとTVで
言っていたのを聞き、なんともトロい、何をぐちゃぐちゃ
検討するんじゃ!と腹立たしく思ったものでした。

そこで僕なりに、そんな凶悪犯をもっとシンプルに裁く方法を
考えたのがこの作品です。鉛筆の6面を削ったところに
書かれているのは「無罪」と「死刑」のみ。
この鉛筆を転がすことで、とっとと判決を下すのが目的です。
問答無用な感じですが、2分の1の確率で無罪にもなってしまう。
そんな運だけで裁かれてしまうゲーム感覚の裁判はいかがでしょうか。



「駄美術ミュージアムショップ」

ここ数年の食玩ブームでありとあらゆるものがミニチュア化された。
キャラクターや生物はもちろん、懐かしの家電、文具、夜店の屋台、
世界のお面、埴輪と土偶などなど、なんでもありだ。
いよいよ村上隆氏のアート作品もミニチュアとなって300円で
販売される。お菓子をつけて、あくまでも「おまけ」として、
そして、シリアルナンバーの入った認定書も付けて、あくまでも
「作品」として扱うようだ。ますますアートとは何か?ボーダーが
わからなくなってくる。

今回の作品「駄美術ミュージアムショップ」はお菓子の
おまけではなく、アート作品を買ったときにおまけがついてきたら
どうだと考えたものだ。作品を梱包する箱に、おまけの箱が
ついている。
いらないお菓子を食べずに捨てるように、「おまけ」欲しさで
アート作品を買うようになればおもしろいのではないだろうか。
おまけは全部で10種類!
黒いもやもやしたものが走る
「不吉な予感」はビートたけしさんお気に入り。

「能面ギャル」

微妙に旬を過ぎたものは恥ずかしい。「三瓶です。」とか
「なんでだろー?」とか。
それを今頃まじめに嬉しそうに
真似る人が僕の目の前に出現したらツライ。
別に僕が恥ずかしいだけで、それを好きで言うのはかまわない。
けど穴があったら入りたくなる。ひとごとながら恥ずかしいのだ。

さて、この「能面ギャル」、阪神の地下の前にある全国の
土産物が売ってる店で買った能面をベースにしている。
それをその頃女子高生に流行っていたガングロ風にメイクしてみた。
付け睫毛をして完成させると意外に僕のタイプになってかなり
驚いた。

今回、HPに掲載するにあたって久しぶりに見てみると、
タイトルといい、発想といい、微妙に旬が過ぎていて頭の中で
つぶやきシローが・・・ああ、恥ずかしいっ

「かんせつ照明」

実はこの「月刊駄美術図鑑」というコーナーは以前勤めていた会社の
HPに載せてもらっていた。退社した為、当然そこからは削除されたので、
新たにこのHPを作ったのだ。
しかし以前載せた作品・原稿でも
お気に入りのものがある。せっかくなので、ココに再度そのまま
掲載したいと思う。2003年も半分過ぎたが、2002年の年明けに
タイムスリップ。

・・・2001年は激動の一年だった。さまざまなことがあったが、
僕が一番印象深かったのは「M-1グランプリ」だ。漫才の頂点を
決めるガチンコの闘い。そんなことが行われていたなんて
知らない人の方が多いような気もするが…。

結成10年以内のコンビが「とにかくおもろい漫才」という基準だけで
闘うという実にすばらしい企画。実に1600組を超えるエントリーがあり、
最終10組での決勝は生放送でクリスマスにテレビ放映された。
その緊張感はまさに格闘技そのもの。
優勝賞金1000万円という
金額もあったが、なにより緊張を高めたのが決勝の審査員の顔ぶれ。
西川きよし、島田紳助、松本人志という各時代の漫才の頂点を極めた
3名を含め、笑いのプロ中のプロが審査にあたったのである。
かつて「お笑いスター誕生」でガッツ石松が審査していたのとは
訳が違う。

とにかくこの「M-1」には感銘を受けた。自分も何かをやらなければ
というエネルギーをもらった。作品やエンターテインメントは
こうでなくちゃダメだ。

今月の作品は「かんせつ照明」。
こんなこと言ってるようじゃダメだ!!

「よっちゃんイルカ」

去年の今頃、捕鯨問題の国際会議が開かれていて
日本が欧米からずいぶん非難されてるのをTVでよく見かけた。
鯨やイルカは知能が高いので、捕って食うのは野蛮な行為だから
止めろとのこと。
まあ、なんと欧米人のぬかすことは万事これですな。ほっとけ!ドアホ。
しまいにゃサル食うぞ!と思いました。

この作品はその件とは関係無く、かなり以前に作りました。
駄菓子の定番「よっちゃんイカ」をもじって
一口サイズのイルカを甘辛いタレで仕上げ、串にさして
食べやすくしたところを作品化し「よっちゃんイルカ」と名付けました。
まあ、駄洒落ですわ。

そんなこんなで、当時むかつきながら会議のニュースを見ていたとき、
この作品を作ったことを思い出し、いっそ会議場に作品を送りつけて
捕鯨反対派達の欧米人共に苦虫を噛みつぶさせてやろうかと
本気で思ったりもしました。

「ワニが死んだときに迎えにくるヤツ」

アニメ"フランダースの犬"の最終回で主人公の少年が死んだとき、
空から天使が降りてきて少年を連れていく。そのとき、一緒に犬も
人型の天使が連れていくのだが、それは犬型の天使が
行うべきではないのか?

象やクジラも人型が連れていくとなるとかなり大変だ。
ミジンコなんてつかめるかどうか…。だいたいあんなパンツも
履いていないようなヤツにそんな重要な役割を任していいのか。
まだ言葉がしゃべれないか、せいぜい新幹線の中で「きー」と
奇声を発している年頃だ。
関係ないが新幹線の中で売られているアイスはカチカチかグニャグニャだ。
硬さを維持できないなら、そろそろ販売をあきらめればいいのに…。

さて、そのような思いを込めてワニ型の天使をつくった。
今日もどこかでいろんな天使が活躍していることだろう。

「ヤングマン」

事故現場の被害者を囲む人型の白線。アウトラインをおおざっぱに
囲むがゆえに、想像をかきたてる余白が生まれます。
それは被害者の体格や性別等の特徴は曖昧にされた、ただそこに人が
横たわっていた痕跡のみが、重く暗くきざまれています。

しかし、もしその人型が少しだけ何かを主張し、しかもそのイメージに
反して、元気ハツラツな若々しいポーズだったらと思い事故現場を
再現して撮影してみました。

左から「Y」「M」「C」「A」。
憂鬱など吹き飛ばして君も元気だせよ!と
語っているように見える僕はノイローゼでしょうか。

「夜明けの はずれ」

「セミは1週間の命」と短命のたとえによく引用されるが、
「1週間」というのは成虫となって地上に出てからの話であって、
寿命自体はもっと長い。
幼虫時代は何年も土の中で過ごすのだ。

13年セミ、17年セミといわれるものは、それぞれの期間、
幼虫として土の中で過ごしその周期で成虫となって大発生するらしい。
短命を哀れむより、「地上に出られて、自由に飛び回れてよかったね」と
思うべきではないだろうか、モグラやミミズと比べると…。

子供の頃、夜中に森へ行って幼虫が羽化する姿をわくわくしながら
見たことがある。
ものすごくゆっくりな為に、テレビではよく早回しで
再生される光景だ。
ゆっくりだからこそ、ドキドキと期待感が余計に高まってくる。
ゆっくりと木を登り、ここぞというポジションでゆっくり背中が
割れていく。
そしてそこから現れるのは「はずれ」の文字。

「しまったぁぁ!」

ああ はずれたのか、17年前に引いたくじは! 今度こそ!

「こけしアレー」

世間は不景気なので、生き残る為にはこれまで通りのやり方ではダメらしい。

客がより満足するような付加価値の高い品物やサービスを提供することが
急務だと会社の社長も言っていた。
ということは旧来の美術に「笑い」や「馬鹿馬鹿しさ」をプラスした
「駄美術」こそが21世紀型の美術のありようでは?と年頭から思ったのである。

さて「こけしアレー」。
置き物の「こけし」に筋力アップの「鉄アレー」という付加価値のついた
21世紀型の美術作品。展覧会での評判も良く、欲しがる人もいた。
しかしタダで。それで気付いたのだが、「馬鹿馬鹿しい笑い」というのは
「価値」ではないということ。
金を払ってまで求められるものではないようだ。「駄美術」は
どこまでいっても「駄」美術なのか。

「バーチャルスイミング」

初対面の人に「駄美術」の説明をするのはなかなか難しい。
「何をつくってるの?」と聞かれて「おもしろいもの~」と言っても
イメージできないらしく、「例えば、頭をココでスパッと切ったものが
ラジコンで走り回る・・・」とか口で言ってもやっぱり伝わらない。
実際に見てもらうのが一番だ。

「バーチャルスイミング」が走ると、どこでも水面に見えるというもの。
駄美術の例として、テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」に初出場の
ときにも出品した。